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「犬猫の味覚について」【獣医師 小林先生のコラム】vol.13.14

【獣医師 小林先生のコラム】vol.13.14

 

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ケーキ開発の際に食材や犬猫にとっての栄養等でアドバイスを頂きました、モノカどうぶつ病院 院長 小林先生のご協力のもと、大切なご家族であるワンちゃん、猫ちゃんの健康についてのコラムを定期的にメールマガジンとして配信いたします。ワンちゃん、猫ちゃんの健康管理の一助にしていただければ幸いです。

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https://www.monoca.jp/

先月はワンちゃん、猫ちゃんの視覚についてお話ししましたが、今回は味覚についてのお話です。

 

◆ 味覚の種類は?

ヒトが感じられる代表的な味覚は甘味、塩味、酸味、苦味ですが、さらに近年では辛味や渋味(痺れ)のほか、日本人が発見したうま味などについても言及されるようになりました。

 

甘味は糖類(純粋な甘味はショ糖)、塩味はナトリウム(ナトリウムイオン)、酸味は腐敗(酢酸などの水素イオン)、苦味は毒物(無機イオン、アミノ酸、アルカロイド、配糖体など)、そしてうま味はタンパク質(アミノ酸や核酸)を感じ取ったものと言われています。いっぽうで辛味と渋味は他と異なり、味覚ではなく痛覚や温覚で感じ取っています。

 

◆ 味はどうやってわかる?

多くの方がご存知のように味を感じ取る器官は味蕾(みらい)と呼ばれています。味蕾は舌の上にだけあると思われがちですが、舌の裏側や側面、頬の粘膜、軟口蓋、喉頭蓋、咽頭壁などにも存在しています。なんと魚類では体の表面に味蕾を持っている種類もいるそうです。

 

ヒトの口腔内の味蕾の数は生まれたときには1万個ほどあるといわれていますが、徐々に減って成人では5000~7000個ほどになるそうです。また、舌の裏側の味蕾は年とともに消えていくそうです。

 

犬の味蕾の数はヒトの6分の1ほどで1700~2000個、猫はさらに少なく近年では500個ほどというのが通説になっています。いっぽうで牛などの反芻動物はヒトの倍以上の味蕾を持っています。

 

味蕾が多ければ味に敏感かというとそうでもなく、味蕾を支配する神経系に異常が生じれば味を感じなくなってしまったり感度に違いがあったりするので、味蕾の数と味覚の鋭敏さは簡単には比例しないようです。

 

とはいえ正常にはたらいていれば味蕾の数が多いほど味をキャッチする受容器官が多いわけですから、味蕾の数と味を感じる能力はおおよそ比例すると言ってよいでしょう。

 

味蕾はチューリップの蕾のような形をしていて、花びらの1枚1枚は味細胞と呼ばれる細長い細胞で構成されています。味細胞は蕾の形を保つ細胞、甘味・苦味・うま味を感じ取る細胞、塩味、酸味を感じ取り味覚を脳に伝える細胞、細胞の生まれ変わりを助ける基底細胞の4つの型があります。

 

味細胞という4種類の花びらが集まった蕾の頂点は、味孔と呼ばれる穴を作って粘膜の表面に顔を出し、食べ物などから味の情報を受け取っています。ここで受け取る情報は絶対に液体でなければならないと言われています。ですからもしも舌や食べ物が完全に乾燥していたら味を感じ取ることはできません。

 

そのため口の中に食べ物が入ると舌や頬粘膜や唾液腺から粘液物質が分泌され、さらに咀嚼することで食べ物を液状化し、それによって味情報を感じ取ることができます。もちろん唾液腺からの粘液は消化酵素を含み、食べ物の消化にも役立っています。

 

◆ 舌乳頭と味蕾

舌にある味蕾はさまざまな形をした舌乳頭とよばれる突起に存在しています。舌乳頭は形の違いから茸状(じじょう)乳頭、葉状(ようじょう)乳頭、有郭(ゆうかく)乳頭、糸状(しじょう)乳頭などとよばれ、このうち糸状乳頭には味蕾はありません。

 

茸状乳頭は主に舌表面の全体、葉状乳頭は舌の側面、有郭乳頭は舌の奥に存在していますが、乳頭の分布や数、形、そして乳頭に存在する味蕾の数は動物ごとに異なっています。

 

味蕾の存在しない糸状乳頭は犬やヒトではあまり発達していません。いっぽうで猫の舌には大きく進化した糸状乳頭があり舌がザラザラする理由となっています。

 

余談ですが猫の糸状乳頭は喉の奥のほうを向いていて尖端には鈎があり、毛づくろいの時には櫛の代わりになってとても役に立ちますが、毛や糸くずなどひっかかるものは吐き出すことができず、ゴミ屑が胃の中に溜まってしまうというデメリットになります。

◆ 猫は甘味を感じない

動物の味覚については未だ研究段階ではありますが、犬は甘味、塩味、酸味、苦味を感じられると言われています。もっとも強く感じるのは塩味でレベル3とすると、他はレベル1くらいらしく、それぞれの味の違いを感じると言うよりも「良い味」「悪い味」「無味」くらいの間隔だそうで、それよりも嗅覚の方が味に深くかかわっているようです。

 

確かにヒトでも風邪をひいて鼻が詰まったりすると何の味もせず美味しくないですね。

 

昔、某グルメ漫画に味というのは舌で味わうだけではないというセリフがありましたが、味覚、嗅覚以外には視覚、食感(触・圧)、温度、前述の渋味、辛味など痛覚も大いに関係あります。

 

さて、猫は塩味、苦味、酸味、うま味を感じられますが甘味は一切感じることができません。感じられる味の中で最も敏感なのは苦味でこれがレベル3とすると、うま味がレベル2、酸味と塩味はレベル1くらいといわれています。

 

甘味は感じませんがそれは好きにも嫌いにもならないということ。つまり好みを左右する原因にはならないということで、中には甘いものを気に入る猫もいます。

 

猫は完全肉食動物なので炭水化物を直接食べることはないため甘味に関する味覚が必要なかったと考えられています。その代わり主食となるタンパク質の腐敗や酸化などに対するセンサーが発達したようです。

 

◆ 味を感じる部位の違い

味蕾は各種味細胞が存在しているので本来は5つの味の全てを感じ取ることができます。したがって舌や軟口蓋、口腔粘膜全体で全ての味を感じることが可能なのですが、不思議とそれぞれの味を強く感じる部位があるようです。

 

甘味は舌の先、塩味は舌の先と縁、酸味は舌の縁と軟口蓋、苦味は舌根部と軟口蓋で敏感と言われています。

 

また、味蕾で受け取った情報を脳に伝えるのは最終的には神経系ですが、舌の前と後ろ、軟口蓋や咽頭など部位によって神経支配が異なります。もし味蕾に問題がなくても神経系に異常が生じれば味を感じなくなってしまいますが、障害を受ける神経の部位によって感じる味にも差が出てくるでしょう。

 

これはヒトでは自覚症状の申告により他人が把握することができますが、犬や猫の場合にはもし味覚に異常が生じていてもわかってあげることはできません。食べ物の好き嫌いなのか味覚の異常なのか判断がつけようがないということになります。

 

◆ 味の感じ方はそれぞれ

ヒトのように細やかな味成分の差を感じていなくても、犬や猫にもそれぞれの味の感じ方があり好みも千差万別のようです。まずは食べ物の臭いをかいで危険がないことを確認し、次いで舌の先でちょっと舐めてみるのも本能的な行動なんですね。飼い主さんが食べているものを欲しがるのは先に毒見をしてくれている…という感覚で安心できるからかもしれません(笑)。

そして味覚や嗅覚だけでなく触覚・圧覚なども好みを左右するということから、フードの型さや形状などで好みが分かれるのも納得がいくような気がします。

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